What is "JERSEY"?〜
JERSEY(ジャージー)には二重の意味があります。まずそれは、英仏海峡のチャネル(Channel)諸島にあるジャージー島を表わします。もうひとつは、このジャージー島原産の「ジャージー種乳牛」をさす言葉です。「ジャージー種乳牛」は、ジャージー島あってのものですし、また、ジャージー乳牛抜きでジャージー島を語ることはできません。 |
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ジャージー島の気候と自然
イギリス領ジャージー島は、チャネル諸島中最大で最南端の島です。イギリス王室直轄地の様な立場にありますが、地理的にはフランスのコタンタン(Cotentin)半島の沖わずか24km程のサンマロー(St.Malo)湾にありますので実体的にはフランスのノルマンディー(Normandy)地方の一部と言えます。つまり、英国というよりもフランス的ムードとセンスの漂うフランス風の島と言えるでしょう。また、首都は、セントヘリアー(St.Helier)という所にあります。
この島は、横14km、縦8km、面積116km2、約8万人の人口です。島の一番高い所で150m程ですから島全体がなだらかな丘陵地帯になっています。気候は、近海を流れる暖流であるメキシコ湾流の影響を受け、すこぶる温暖です。このため全島的に草や木が豊かに繁茂し、いたるところに多種多彩な花が咲き乱れ、花と緑の島と形容できます。「花の島」ジャージーでは海岸沿いの遊歩道、森道、小径が整備され、カントリーウォーキング、サイクリング、乗馬など楽しむ人も多く、海辺では、サーフィン、水上スキー、ウィンドサーフィン等も盛んに行われています。このように、「夢の島」ジャージーは、観光地、保養地として有名で主としてイギリス人、フランス人に大いに利用されています。 |
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ジャージー島の産業
この島は、今日では観光地、保養地ではありますが、この温暖な気候と気温を活かして昔からジャガイモ、トマト、ブロッコリー等の蔬菜、各種フルーツがエコロジカルに栽培されています。それに加えてなだらかな丘状の地形と豊富な牧草を利用して、これまたはるか昔から乳牛の飼育も盛んでした。文字通り「ジャージー種乳牛」が育てられ、種畜の輸出も大切な産業とされてきました。酪農と園芸が歴史的、伝統的産業であったのです。 |
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 ジャージー島の歴史
ジャージー島は、本来ノルマンディーの一部でした。933年ノルマン人が、ノルマンディー地方とチャネル諸島を占領したからです。その後、ノルマンディー公ウィリアム(征服王)が1066年イングランドを征服し、イングランド王に就いて以来イギリスの支配を受けました。しかし1204年ジョン王(欠地王)の時ノルマンディーを失い、再びフランスのものになろうとした時、ジャージー島民はノルマンディーをとるかイギリス王室に忠誠を誓うかの選択を迫られたのですが、彼らはイギリスを選び今日に至っているのです。
それゆえ現在は、“THE STATE OF JERSEY”として独立の政府を持ち、独自の司法制度と通貨(本島のみ通用するものでイギリス本土では使用できません)の発行をも認められるという特権も保有しています。ジャージー島は英国議会に直接服属しているのではなく、したがって英連邦(United Kingdom)の一部でもなく欧州連合(European Union)の一員でもないという異色の政治的立であります。単に歴代の英国君主に忠誠を誓い続けている、―――換言すれば英国王室とダイレクトに強固な“えにし”と“きずな”に結ばれてきた―――特異な島ということになります。
この様な温暖な気候の下、花と緑に彩られた自然環境と澄み渡った空気と水、良質の牧草にも恵まれた本島で飼養された「ジャージー種乳牛」は、性格も温和で人に対しても従順です。さらに牧草を乳に変換する能力が特に秀れています。この性質と能力が抜群の品質の牛乳を生み出すのです。このジャージー種は上述の事情により、イギリス王室・貴族の牛乳を供給すべく、過去600年間他品種の牛は島に入れず純粋繁殖され、さらに改良を重ねて今日に至ったのです。
ところで世界で飼育される乳牛の種類にはホルスタイン、ジャージー、ガンジー、エアシャー、ブラウンスイスなどがあります。まずホルスタインは白と黒のブチ模様で日本で牛といえば、だれでも即座にこの牛を思い浮かべる種です。ジャージーは各種乳牛中体格は最も小さく、全体的に薄茶色をしています。小柄な為、一見鹿のような顔つきで可愛らしく非常に優美な姿をしています。世界的な分布としては本島以外に、イギリス本国、デンマーク、などの北欧、イギリスと縁の深いオーストラリア、ニュージーランド、アメリカなどで広く飼育されています。 |
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ホルスタイン |
ジャージー |
乳脂肪 |
3.65% |
4.97% |
無脂固形分 |
蛋白質 |
3.05% |
3.66% |
乳糖 |
4.61% |
4.70% |
灰分 |
0.73% |
0.77% |
計 |
8.39% |
9.13% |
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ジャージー牛乳の特質
本種は乳量においてはホルスタインより劣りますが、乳質においてその最大の特質があります。それは乳脂肪率が5%程あり、各乳牛中最高レベルであるということです。次に無脂固形分も9.1%と高い水準となっています。特に蛋白質は高水準であり栄養的に一段とすぐれています。この様な組成により風味は非常に濃厚です。しかし同時に―――ここが不思議なのですが―――決してくどくなく、むしろまろやかで上品な味わいが味覚上の特質です。 |
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蒜山(ひるぜん)高原のジャージー乳牛
このジャージー種の日本への導入は古くは明治時代中期からなされて来ましたが、総じてごくごく少数の特殊な乳牛として特定の牧場で限定的に育てられてきた程度でした。日本全土に本格的に飼育されだしたのは戦後の昭和28年頃からでした。北海道、青森、岩手、群馬、山梨、長野、静岡、宮崎等の高地山麓に導入されました。
岡山県の蒜山(ひるぜん)高原には昭和29年ニュージーランドから最初の68頭がやって来ました。その後さまざまな失敗や苦労・困難を克服して現在では約2,000頭が飼育されています。日本全体でジャージーは約8,000頭強ですから日本におけるのジャージーの約25%が蒜山地域で育成されていることになり、日本一のジャージー種の産地となっています。ちなみに日本全体の乳牛の頭数は約180万頭強で、圧倒的大多数(99%)はホルスタイン種でジャージー種は8,000頭強ですから全体の約0.4%〜0.5%で文字通り本種は希少でかつ貴重な品種といえます。 ジャージー種の日本一の産地、蒜山高原は、岡山県北に位置し、風光明媚な名山、国立公園大山(だいせん)に連なっています。高原中腹や山麓には澄み渡った明るい空気、清らかな水の流れ、その水と空気がはぐくむ良質の牧草が豊富にかつ広大に広がっています。 この最良の自然環境と酪農家の心のこもった世話により蒜山高原のジャージーからコクと甘みのある最高のジャージー牛乳が生み出されるのです。
この真に希少で貴重な栄養的にも風味においても日本一の蒜山高原ジャージー牛乳をふんだんに使った「ギンソウジャージープディング」は、いわゆるプリンよりも栄養価はもちろんのこと特に味覚の上ではまず“コク”最大の特質があります。しかし、この“コク”は、同時に上質で奥床しい優雅にして高貴な独特の要素を秘めています。味に“コク”がありますから重み、深みが味わえますが、それでいてやわらかで品のある風味、舌の上でとろけるような食感はプリンの味以上の<味>を醸し出しています。 |
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